{ "name": "須臾の夢の翼", "description": "風の翼のデザイン。曲が鳴って昔の夢に入り込むことができたとき、意識が朦朧としている須臾の間に獲得したもの。", "rarity": "4", "story": "これは『かげろうの夢の羽』という弦楽曲に纏わる小さな物語だ。\n優美な名曲とまではいかないが、メロディが感動的で一時期は広く親しまれていた。\nだが流行というのは一瞬で、新しい曲が世に出れば過去の曲を聞く人は徐々にいなくなる。\nさらに時が経つと、曲を書いた人の名を知る人もいなくなる。\n人は皆こう言う。あの人の才能は憂曇華の花のように儚かった。現れてはすぐ消える数多くの歌手たちと同じように、と。\n\n「才能は憂曇華の花のように儚かった。現れてはすぐ消える数多くの歌い手たちと同じように…」\n街の人々からの評価を話しながら、彼女は縁側に腰かける姉を見ていた。\n姉は彼女に背を向けて琴を斜めに持ち、慣れた手つきで弦を弾いた。\n「世間はこうも言いました。一生の短いかげろうが、尚も夢に浸ろうとするなんて、だらしがないにもほどがある、と。」\n記憶にある姉は始終彼女に背を向けたままで、引用された言葉にも反応せず、ただただあの徐々に忘れ去られたメロディーを奏で続けていた。\n作曲者は自分の作った曲を愛するものなのだ。\nしかしその後、姉もそういう余暇を過ごすことが減り、やがて…姉の弾くその曲を聞く機会は永遠に失われた。\nとはいえ姉に比べて彼女自身は音楽に疎く、次第にそんな出来事さえも忘れていった。\n\n次に曲を聞いたのは、一人で旅に出て、酒場の庇で雨宿りをした時のことだった。\n目の見えない琴師が店主に酒をせびろうと、その曲を弾いたのだ。老人の腕前は上等とまではいかなかったが、十分に聞けた。\n曲を弾き終えて一杯の酒を腹に入れ、ほろ酔いの琴師は、この曲は元々最も高貴なお人が作ったものだ、決して嘘ではないと言った。\nだが、さすらいの旅芸人がホラを吹くのはよくあること。信じる者はどれだけいただろうか。\nその場がどっと笑いに包まれる中、彼女だけが突然に記憶の中へ引き込まれた。\n午後の日が明々と差す庭で、池を波立たせたあたたかい風。わずかに揺らめく木陰。手慣れた指が奏でる弦の響き…\nそして最後に見てからもう随分と経った、琴を抱え縁側に座る人影を。\n今まさに——今まさに振り返ろうと…\n\nかげろうで何が悪い?万物は一瞬にして生まれ、滅びる。朝の白露が夜には塵になるとしても、情熱的な夢を抱くことはできる。\n憂曇華の花の何が悪い?一晩で咲いて散るその姿は、目にした者の心に一生忘れられない景色を残す。\nならば思い出、思い出とは。\nそれはまさに、かつて風のように過ぎ去った日々を一瞬の恍惚の中で呼び戻すことではないのか?\n\n「…この風の翼は、社奉行が骨董品を整理している時に埃の被る琴のそばで見つけたそうです。私にはあまり使い道がないから、あなたにあげましょう。」\n女性がそう言った時、その手には既に綺麗に塗り直された琴があったが、楽器を持つ姿勢があまりに不慣れな様子だった。\n期待の眼差しに気づいた彼女は軽く肩を落としてこう言った。\n「先に言っておきますが、私の琴の腕前は武芸のそれとは程遠いですよ。」\n昔のことを思い出し、彼女は唯一覚えたその曲を演奏する。", "sortorder": 140013, "ishidden": true, "source": [] }